心不全とむくみの関係

心不全とは

心臓の働きが低下すると、全身に送る血液の量、心拍出量が低下します。しかしあまりにも少なくなりすぎると命にかかわるため、心拍出量が低下すると、心臓は血液を送る回数、脈拍数を増やします。また手足の血管を収縮し、心臓に多く血液をため込むことで、少しでも多くの量を送り出せるようにします。そしてこれらの手段を取ることで、一時的に心拍出量の減少を抑えることができます。
しかし長期間この方法を続けていると、心臓に大きな負担がかかるようになります。すると心臓の働きが低下、心拍出量もさらに低下し、全身に不調が生じるようになります。つまり心不全とは病気の名前ではなく、心臓の働きが悪くなり、全身に症状が現れた状態を示します。

心不全を起こす病気とは

心不全は病気ではなく、心臓の働きが低下し全身に不調が生じた状態を示します。そのため心不全の陰には様々な病気が隠れています。

まず挙げられるのが、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患です。心臓から全身に血液を送り出す冠動脈が動脈硬化により狭くなると、血液の通り道が狭くなり、心拍出量が少なくなり、心不全が症状として現れます。
また心臓に戻る血液の量も少なくなるため、心臓に十分酸素や栄養が行きわたらなくなり、狭心症や心筋梗塞につながります。

次に挙げられるのが、狭窄症や閉鎖不全症など心臓の弁に異常が生じた場合です。心臓の弁に異常が生じると、血液が逆流するようになります。すると本来全身に送るべき血液の一部が心臓に戻ってしまうため全身に血液が送られにくくなります。
また、心臓に血液が戻ってくるため心臓に多く血液が溜まり、心臓肥大につながります。すると心臓に負担がかかり、心拍出量が減少するため心不全につながります。

また、心臓の筋肉に異常が生じる心筋症が生じた場合も、心不全が症状として現れます。心臓は筋肉でできており、筋肉を伸びたり縮ませたりすることで血流を生み出しています。しかし何らかの原因によって筋肉の伸び縮みの働きが悪くなると、血流が悪くなり、心不全が症状として現れるようになります。この状態が心筋症になります。
なお、心筋症には心臓の筋肉が厚くなる「肥大型」と、筋肉が伸びたままになってしまう「拡張型」があります。
このうち肥大型は症状が現れにくく、激しい運動を行った時などに不整脈が起こり、突然死につながる恐れがあります。一方、拡張型は心不全が症状として現れ、徐々に進行するという特徴があります。

そして心不全は、心臓に異常がある場合に生じるとは限りません。
腎臓に異常が生じた場合も心不全が症状として現れることがあります。

腎臓は体内の余分な水分やナトリウム等を尿として排出する働きがあります。しかし腎臓に異常が生じると、尿の排出が行われにくくなり、体内に必要以上ナトリウムが溜まってしまいます。

ナトリウムはカリウムと一緒に、筋肉の収縮を調節するために働きます。しかし体内に必要以上ナトリウムがあると、筋肉の収縮の命令がうまくいかなくなり、心臓の筋肉に負担がかかってしまいます。

またナトリウムが体内に増えすぎると、細胞内のナトリウムの濃度を下げる為に、細胞は水分を多く吸収します。すると細胞が膨張し、血管を狭めてしまいます。すると心拍出量が低下し、心不全が症状として現れるようになります。

さらに、肺炎によっても心不全を引き起こす恐れがあります。肺炎になると肺の機能が低下するため、動脈血の酸素量が低下します。すると少しでも酸素を送り出そうと心拍数が増えるため、心臓により大きな負担をかけてしまい、心不全につながってしまいます。

心不全でどのようにむくみが起こるのか?

心不全の症状には様々なものがありますが、その中でも全身に起こる症状として挙げられるのが、むくみになります。
むくみは細胞に水分が多く溜まった状態を示しますが、これは血流の悪化によって生じます。

心臓と血液の流れ

心臓は4つの部屋に分かれています。
まず新鮮な酸素を含んだ血液が左心室から大動脈を通って全身に送られ、二酸化炭素などを細胞から受け取った後、大静脈を通って右心房に戻ります。そして二酸化炭素などを含んだ血液は右心室に送られ、右心室から肺動脈を通って肺に二酸化炭素が送られます。
そして肺で二酸化炭素を排出し、酸素を受け取った血液は肺静脈から左心房に戻り、再び左心室に送られます。

右心不全とむくみ

右心室に異常が生じた状態が、右心不全になります。右心室に異常が生じると、肺への血流が悪くなります。すると肺は酸素不足の状態となります。
また、右心室の働きが悪くなると、右心房に全身からの静脈血が多く送られても右心室に送ることができないため、受け取り切れなくなってしまいます。
すると全身の血流が滞り、細胞から水分が排出されにくくなってしまいます。こうして水分が細胞に溜まった状態が、むくみになります。

なお、むくみは心臓から離れた部分、顔や足に特に症状が現れやすいです。これは心臓から離れた部分は重力の影響により、血管から水分が染み出しやすいのが原因です。特に足はむくみが出やすいので、足のスネを指で押しても戻らない場合は注意しましょう。

むくみ以外の症状とは?

右心不全に陥ると、細胞に水分が溜まり、むくみが起こるようになります。このとき、むくみは足や顔といった目に見える部分だけでなく、胃や肝臓などにも起こります。そのため、腹水・便秘・食欲不振・嘔吐・肝腫大といった症状も現れます。さらに体内に水分が多く溜まっている状態なので、体重増加も見られるようになります。そして体重が増えるために、だるさも現れてきます。

一方、主に左心室に異常が生じると、左心不全に陥ります。左心室に異常が生じると、全身への心拍出量が低下します。すると全身に十分酸素や栄養が行きわたらなくなり、冷えや疲れやすさ等の症状が現れます。さらに、腎臓にも十分血液が行きわたらなくなるために腎臓の働きが悪くなり、尿の減少につながります。尿が減少すると体内に余分な水分が溜まってしまうため、むくみにつながってしまいます。

また左心室の働きが悪くなると、左心房に肺から静脈血が送られても左心室に送り切れないため、左心室は肺からの静脈血を受け取り切れなくなってしまいます。すると肺の血流が悪くなり、肺に水が溜まりやすくなってしまいます。
肺に水が溜まると、少しでも水を追い出そうと咳や痰が生じるようになります。また、肺に水が溜まると酸素と二酸化炭素の入れ替えがうまくいかなくなり、十分に酸素を取り入れることができず、息切れを起こすようになります。
そして息切れの症状が悪化すると、立ち上がっただけで息切れを引き起こす「起坐呼吸」に陥ってしまいます。

そして心不全とは心臓が少しでも心拍出量を増やそうと、心拍数を増やした結果生じたものになります。そのため心臓は通常より多く動いている状態であるため、動悸が大きな症状として現れます。

日常の留意点

心不全は心臓に負担がかかり、機能が低下したことによって全身に症状が現れた状態を示します。そのため心不全を防ぐためには、日ごろから心臓に負荷をかけすぎないように気をつける必要があります。

まず大切なのが、血管に負荷をかけないことです。高血圧や動脈硬化が進行すると、血管が硬く狭くなり、血液が通りにくくなってしまいます。そのため脂っぽい食事・塩分・アルコールはできるだけ控えるようにします。

また急な温度変化や便秘のふんばりは血管を一時的に収縮させるため注意が必要です。
さらに無理な運動や睡眠不足は心臓に強い負荷を加えます。
そのため急に激しい運動をしたりせず、自分の身体に合った運動を行い、適度に体を休ませることも大切です。

そしてむくみの解消も心臓に負荷をかけないために重要です。
むくみが生じていると、細胞が血管を圧迫し、血管を狭めてしまいます。そのため、むくみが発生したらマッサージをするなどして、血流を良くする必要があります。また、漢方で血流を促進したり、水分の排出を促すことも有効です。

そして何よりも、心不全の陰には心臓や腎臓の病気が隠れていることがあります。その場合は根源となる病気の治療が最も大切になります。